尾崎さん奥村さん

新規就農3年目 ●● ●●さん

titlebk-small.png titlebk-small-subtitle2.png
ozakiokumura.jpg

豊富温泉コンシェルジュ・デスク尾崎滋さん奥村歩さん

尾崎滋さん(写真左)静岡県出身。関西の大学在学中にアトピー性皮膚炎の湯治治療に豊富町を訪れる。卒業後、平成23年コンシェルジュ・デスクのスタッフに採用される。奥村歩さん(写真右)北海道旭川市出身。アトピー性皮膚炎の湯治療養に専念するため、長期豊富町に滞在する。その後完治させるために平成23年移住。コンシェルジュ・デスクのスタッフとして働く。

受け継がれる、温泉と湯治客をつなげる「かけはし」

toyotomionsen2-182-144.jpg

<入浴は、期待と不安とを抱えながら>

 宗谷地域にも温泉療養の効果に期待して、全国各地から湯治客が訪れる場所がある。それが、豊富町にある豊富温泉。全国的にも珍しい、湯治用に特化した温泉といえる。温泉は乾癬やアトピー性皮膚炎の症状に効能があり、皮膚科の医師が推薦することもあるとか。症状の改善が一向に進まず、悩んでいる患者にとっての最後の砦のような存在になっている。湯治中の適切な入浴方法をアドバイスしたり、湯治客の長期滞在のサポートをしたりするのが、温泉コンシェルジュ・デスクである。

<温泉コンシェルジュデスク>

 町営の温浴施設「ふれあいセンター」内に設置されている。スタッフの任期は1年毎の更新制。実際に湯治経験のある人が、代々勤めるのが慣例になっているようだ。スタッフの尾崎さんと奥村さんも湯治をしながら仕事をしている。コンシェルジュの役割は、湯治客の体調の変化を聞き取り、適切な入浴の仕方を指導することだ。「湯治治療の初期段階は、一時的に症状が悪くなってから改善の方向に向かっていく方が多いです。体内に溜まっている毒素のようなものが、出ていくイメージでしょうか」(尾崎)。

 

ozaki121-277.jpg

初めて湯治を体験する人は当然驚くし、悪化したものと勘違いしてしまう。このように湯治滞在の期間中は、湯治客本人の体調の変化を見守っていくことが大切になってくる。投薬の状況やリバウンド(治癒していたはずの症状が一転して悪化すること)も考慮に入れながら過去のデータと照らし合わせて、アドバイスをしている。

toyotomionsen1-248x170.jpg

実体験をもとにして

 アトピー性皮膚炎患者であった尾崎さんが、豊富温泉に初めて訪れたのは大学生の時だった。他の患者から豊富温泉の効果を聞かされ、実際に出向いて、湯治を体験した。定期的に湯治に訪れ、その甲斐あって目に見えた改善が見られたが、就職活動という大事な時期に症状が悪化。活動を続けようかと迷っていた時に、コンシェルジュスタッフの新人募集を知った。自身の湯治も継続しながら働けるこの職業に応募し、採用された。2011年に豊富町に移住。親身になって話を聞いてくれた前任のスタッフへの感謝も応募動機の一つである。「これから訪れる湯治客に同じ気持ちなってもらいたい」と恩返しの意味も込めて仕事に励んでいる。女性スタッフの奥村さんも、長年アトピーの症状に悩まされてきた。新聞の記事で知った豊富温泉に活路を見いだそうと湯治治療を定期的に行う。症状の改善が見られたり、温泉に入らない期間には悪化したりと安定しなかった。ついに思いを決めて、完治を目指して湯治治療に専念しようと考えた。また、日頃相談していたコンシェルジュスタッフから「自分の後釜に」との誘いもあって、2011年に豊富町に移住してスタッフとして働くようになった。アトピーは、妊娠・出産やホルモンバランスが関係して症状に影響が出やすいなど、女性の相談者には気を遣う。「自分の経験を踏まえながら良いサポートができるように心がけています」(奥村)湯治客は、症状以外にも周囲の無理解や孤独といった精神的な負担も大きい。知り合いもいなければ、温泉周辺に気晴らしになる娯楽もない。そんな塞ぎ込みになりがちな湯治客同士を結びつける役目が、コンシェルジュ・デスクにはある。月一回のお茶会をはじめ、食事会やスポーツ大会やクラフト工作体験会など趣向を凝らしたイベントを開催している。「期間中はストレスなく、楽しく湯治してもらいたいです」(尾崎)「情報交換の場にもなるので、大切なイベントです」(奥村)

受け継がれる感謝の気持ち

 二人の努力は、同じ思いを抱える人たちを連帯させていく。湯治客が利用するフリースペースには、10代、20代の湯治で来ている若者たちが集まる。二人のスタッフとよく打ち解け合ってリラックスした様子から、どこか安心感が窺える。いまではスタッフの3代目となった尾崎さんも奥村さんも、かつてはそんな安心感を感じながら、湯治に通ったのだろう。コンシェルジュ・デスクの仕事は、単なるアドバイスやサポートに留まらない、湯治療養に来る次の世代への思いを込めたバトンのような気がする。

カテゴリー

地域政策課のカテゴリ

cc-by

page top